第16回
「強みを活かす目標の作り方」

皆さん、毎日のお仕事本当にお疲れ様です。

日々、目の前の作業に全力で取り組んでいると、「自分は一体どこに向かっているんだろう?」とふと立ち止まりたくなることはありませんか?

今回は、そんな時に進むべき方向を照らしてくれる「目的」と「目標」の立て方についてお話しします。難しく考える必要はありません。まずはこの2つの言葉を、次のように整理してみましょう。

1.「目的」と「目標」の違いとは?

  • 目的(ビジョン): 事業を通じて「何をしたいか」「どうなりたいか」。5年後、10年後に目指す中長期的な到達点です。私はこれを「仕事のビジョン」と呼んでいます。
  • 目標(ロードマップ): 目的地にたどり着くための「通過点」です。

目標があるからこそ、人は集中して頑張ることができます。一つ一つの目標をクリアした先に、本来の目的(ビジョン)が近づいてくる。そんな関係です。

目的と目標の違い 画像

ところが、経営の現場を見ていると、この関係が逆転しているケースをよく見かけます。

例えば、最近は規模拡大や法人化に対する「補助金」が手厚くなっていますが、いつの間にか「補助金をもらうこと」自体がゴール(目的)になっていないでしょうか。

本来、補助金はビジョンを叶えるための「手段」のはずです。手段が目的になってしまうと、身の丈以上の事業規模になり、結果として以前よりも仕事に追われ、収益が悪化してしまう……。そんな本末転倒な状況に悩む経営者を、私はたくさん見てきました。正しい関係性を忘れないことが、経営を健全に保つ第一歩です。

2.「できていること」を強みに変える

目標を立てようとすると、どうしても「できていないこと(問題点)」を直さなきゃ、と苦しい気持ちになりがちです。特に農家さんは真面目な方が多いため、自分の頑張りを過小評価してしまう傾向があります。

そこで、まずは「できたことの棚卸し」から始めてみてください。自分に甘くても構いません。どんな小さなことでも書き出しましょう。

そして、その「できたこと」を掘り下げます。「なぜ、それができたのか?」を考えてみるのです。

  • ●作物を観察する力
  • ●繁忙期に作業を間に合わせる段取り力
  • ●パートさんへの的確な指示や気遣い

これらは、皆さんがこれまで積み重ねてきた立派な「強み」です。漠然と「なんとなくできた」で終わらせず、理由を明確にすることで、それは何度でも使える皆さんの武器になります。

経営の神様、ピーター・ドラッカーは「できなかったこと(弱み)を克服することに時間を使うのではなく、できたこと(強み)を最大限に活かして目標を設定すべきだ」と説いています。

強みを活かす

3.数字で測る目標(定量目標)

強みを活かした目標設定には、2つの種類があります。1つ目は「数値目標(定量目標)」です。数字で表すメリットは、達成したかどうかが一目で分かり、次の行動に移しやすいことです。

  • ●作付面積や反収(kg/10a)の向上
  • ●販売単価や売上目標の達成
  • ●労務費率や燃料費の抑制

これらの数字を家族やスタッフと共有することで、チームとしての一体感が生まれます。ただし、数字ばかりを追いかけると、本来のビジョン(農家としてどうありたいか)を見失うリスクもあります。かつての私も、数字に追われて「自分は何のためにこの仕事をしているのか」と悩んだ時期がありました。数字はあくまで、ビジョンへ向かうための「物差し」だと考えましょう。

ビジョンにつながる自社の目標

4.行動や仕組みの目標(定性目標)

数値目標とセットで大切になるのが、2つ目の「行動や仕組みの目標(定性目標)」です。

「具体的に何を習慣にするか」「どんな状態を目指すか」という、数字では表しにくい活動の目標です。

ここでは、「達成できる目標」「挑戦する目標」のバランスを意識しましょう。

  • 達成できる目標(土台): 「毎週ミーティングをする」「栽培講習会に参加する」など、今の延長線上で確実にできそうなこと。
  • 挑戦する目標(未来): 「右腕となる社員を育てる」「新しい部門を立ち上げる」など、ビジョンに近づくための新しい一歩。

最初から高い山に登る必要はありません。例えば「正社員雇用」が難しければ、まずは「スポットワーク(タイミーなど)」を活用してみる。大きな山を小さな階段に分解して、一段ずつ登っていくことが大切です。

目安として、最初は「達成できる目標 8 : 挑戦する目標 2」くらいの割合から始め、自信がついてきたら徐々に挑戦の比重を増やしていくのが、長く続けるコツです。

ビジョンにつながる定性目標

最後に、今回お話しした内容を実践するための「目標設定シート」を添付します。このひな形を参考に、各々でカスタマイズして活用してみてください。

このコラムは、皆さんが経営に迷った時の「辞書」のような存在でありたいと思っています。一度に全部できなくても大丈夫です。まずは「できたこと」を一つ書くことから始めてみませんか?皆さんの歩みを、これからも応援しています。

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