知っておきたい「会社」のしくみ ~経営変革の”道具”としての法人化入門~

皆さま、ご機嫌いかがでしょうか?『元気な畑のごちそう』株式会社須崎青果 代表取締役の市川義人です。
いつも須崎青果のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。

 

今回は、7月28日に予定している農業経営セミナーについての前説のようなモノを書かせていただきます。

 

このコラムは、皆さまが日々行っている「農業経営」を、次のステージへ進めるための一つの“道具”である「会社(法人化)」について、その基本的な考え方をご説明するものです。

「法人化すれば儲かる」

「会社にすれば節税できる」

そんな話を耳にすることがあるかもしれません。しかし、今回のセミナーで講師を務める本田茂氏は「法人化は魔法の杖ではない」と断言します。大切なのは、形式を変えること以上に、まずご自身の経営を客観的に見つめ、日々の数字と向き合う「経営者としての意識と規律」を持つことです。

この資料は、その第一歩として、会社という仕組みの基本を知り、ご自身の経営の未来を考えるための「きっかけ」となることを目指しています。

 

第1章 なぜ今、「会社」という道具(ツール)を考えるのか?

多くの方が「個人事業主」として農業を営んでいらっしゃいます。ではなぜ、あえて「会社」という形を検討する必要があるのでしょうか。
それは、法人化が皆さまの「実現したい未来」を達成するための、強力な選択肢となり得るからです。

・事業承継 「子どもや後継者に、スムーズに事業を引き継ぎたい」
・規模拡大 「もっと農地を集め、新しい設備を導入して挑戦したい」
・人材確保 「人を雇い、組織として安定した経営をしたい」

大切なのは、こうした「何のために(目的)」という問いです。法人化は、この目的を達成するための「手段」であって、ゴールではありません。まずご自身の「目的」を考えることが、法人化を検討する上での出発点となります。

 

第2章 「社長になる」ということの本当の意味

会社を作ると、あなたは「個人事業主」から「経営者(社長)」になります。これは、単なる肩書きの変化ではありません。そこには、大きな意識の変革が求められます。

特徴1:あなた個人の財産と、会社の財産を「完全に」分ける

法人になると、「〇〇農園株式会社」という、あなたとは別人格の存在が生まれます。これにより、トラクターや軽トラックなどの資産、そして銀行口座もすべて会社名義になります。
これは、生活費と経営のお金が明確に分かれることを意味し、いわゆる「どんぶり勘定」からの完全な卒業を意味します。すべての活動を「数字」で説明する責任が、ここから始まります。

特徴2:責任に「限り」が生まれる

個人事業主の場合、事業の借入金は、万が一返せなくなると個人の資産で返済する義務があります(無限責任)。
一方、株式会社の大きなメリットは、この責任に限りがあることです(有限責任)。出資者(株主)は、自分が出資した金額の範囲でしか責任を負いません。会社の借金のために、個人の家や土地まで手放す必要は原則としてないのです。
この仕組みがあるからこそ、個人の生活を守りながら、未来に向けた大きな投資や挑戦がしやすくなります。

 

第3章 法人化の「光」と、知っておくべき「影」

法人化には、多くのメリット(光)がありますが、同時に相応の負担(影)も伴います。その両方を理解しておくことが、冷静な判断には不可欠です。

【光】 主なメリット

◇社会的信用の向上
金融機関からの融資が受けやすくなったり、取引が有利に進んだりすることがあります。

◇人材採用の優位性
社会保険が完備されるため、従業員が安心して働ける環境を整えやすく、人を募集する際に有利になります。

◇事業承継の円滑化
株式の譲渡という形で、後継者へスムーズに事業を引き継ぐことができます。

【影】 主なデメリット・注意点

◆社会保険料の負担
たとえ社長一人だけの会社でも、社会保険への加入が義務となり、その費用は経営の大きな負担となり得ます。

◆事務作業の増加
税務や労務に関する手続きが複雑になり、専門家(税理士など)への依頼費用も発生します。

◆赤字でも納税義務
たとえ赤字決算でも、法人住民税(均等割)として最低でも年間7万円程度の税金がかかります。

これらの「影」の部分を理解せず、準備不足のまま法人化に踏み切ると、かえって経営を圧迫してしまう危険性もあるのです。

 

おわりに 

今回は、会社という仕組みの入口を、駆け足で見てきました。お分かりいただけたように、法人化は「した方が良い・しない方が良い」と一概に言えるものではありません。

「自分の経営状況なら、どう判断すべきか?」「成功する法人化のために、今から何を準備すべきか?」

その具体的な答えは、皆さまの経営状況や目標によって全く異なります。

 

来る7月28日の農業経営セミナーでは、これまで数百という農家の経営改善に携わってきた本田茂氏が、皆さま一人ひとりの疑問や不安に、豊富な現場経験を基にお答えします。

「法人化のリアルな成功事例と失敗談」
「わが社に最適な法人化のタイミングの見極め方」
「経営者として必須の、決算書の読み解き方」

など、ここでしか聞けない話が満載です。

まずはご自身の経営の「健康診断」をするつもりで、ぜひお気軽にご参加ください。

 

会場でお会いできることを、心よりお待ちしております。